「久しぶりだね」
両者そう言った。
彼女と再会するのは実に1年ぶりのことだった。
あの頃より明らかに伸びた後ろ髪、背はかわってないが何か成長したようにも見えた。
それはまるで、思春期特有の反抗が終わった闊達さと聡明を持った淑女のようにも見える。
何を話していいのか言葉が喉に詰まる。咳をしてみても多分このわだかまりはいっこうに消えないだろう。
取り敢えず喫茶にでも入ろうそう思ったとき、こつこつと頭上から落ちてくるものがあった。
「雨だ」
またそこで二人の声が空気中に孕んだ。
その孕んだ声は空気中で分解され二人の前から姿を消す。そしてまた新しい空気が僕らの前に現れる。
「雨ってどこに流れ着くんだろうね」僕らはそういう話をしたことがあった。
「地に落ちて、それから雨が浄水されて飲み水になってそれが私たちの涙になってそれの繰り返しじゃない」彼女はそう言ってた。
その時は全くといっていいほど理解しがたい小気味の悪い内容だったが、今ようやく理解できたような気がした。
喫茶に入り少しばかしお互いに最近の境遇を話していたのだが、そこでの会話もなんとなく続かないので別々の岐路に帰るようになった。
先に店を出ると、雨はやんでいてあの独特な匂いだけが空気中に浮かんでいた。